「動物性油脂」って危険視されているけど、なぜ危険なの?
動物性油脂は危険な原材料として紹介されがちですが、健康被害を及ぼすほどの毒性があるわけではありません。でも、さまざまな観点から動物性油脂は避けるべきであることには間違いありません。
本記事では、動物性油脂が「なぜ危険なのか?」を、以下3つの観点からわかりやすく解説します。
ドッグフードは大切な愛犬のごはんです。愛犬が「おいしい!」と食べている姿を安心して見守れるように、値段ではなく原材料に目を向けましょう。
【自己紹介】生まれた時から犬がいる環境で育ち、犬が大好き。あなたの愛犬が元気に長生きできるように、心を込めて記事を作成しています(詳細プロフィールはこちら)。
【所有資格】1.SAE認定「犬の管理栄養士マスター」2.ペットフード協会認定「ペットフード販売士」3.JCSA認定「ドッグトレーナープライマリーライセンス」4.アニマルウェルネス協会認定「ペットフーディスト」
本編が始まるよ!
ドッグフードの危険な原材料「動物性油脂」とは
ドッグフードの粒の表面がベタベタしていたり、鼻にツンとくるニオイがした経験はありませんか?実は、その正体のほとんどが、ドッグフードに吹き付けられた(コーティングされた)動物性油脂です。
動物性油脂とは「動物からとった油または脂肪」のことです。6大栄養素のひとつである脂質に分類されるため、わんちゃんにとって重要な栄養素ではあります……が!
愛犬には食べさせたくない「危険な原材料」でもあるのです。
詳しく説明していきますね。
動物性油脂の怖い製造方法「レンダリング」
動物性油脂は、レンダリングという方法で製造されます。レンダリングとは、原料となる動物の不可食部位(食用にはならない部位)をまとめて大きな容器に入れ、機械でゆっくりと砕き加熱処理することです。
浮いてき油脂が、動物性油脂のもとになります。ちなみに、残った原料を加圧して水分を取り除いたものは「肉骨粉」と呼ばれます。肉骨粉については以下の記事で解説しています。
≫愛犬家の不安「4Dミート」の正体とは?ドッグフードの原材料の裏話
原料となる動物って具体的には?
たとえば…
- 自動車にひかれた野生動物
- 病気で薬漬けにされた動物
- 安楽死させられた動物
- 亡くなったペット、など
一番怖い点は、どのような種類の動物(牛や豚、鶏など)が含まれているかが「不明瞭」なことです。一説では、わんちゃんが含まれている可能性もあるとのこと。これでは共食いとなり、倫理的に問題視されることもあります。
動物性油脂が含まれるドッグフードの傾向
動物性油脂は全てのドッグフードに含まれている訳ではなく、「安価なドッグフード」に含まれる傾向があります。
なぜなら、動物性油脂は、本来であれば廃棄される「不可食部位」から製造されるため、安く入手できるからです。
動物性油脂が含まれていないか見分ける方法
見分け方はとても簡単。パッケージに記載されている原材料欄に「動物性油脂」と表記されているかを確認すれば良いのです。
ドッグフードを購入する際は、ぜひ確認してみてくださいね。
なぜ動物性油脂は危険なのか?3つの理由を解説
前章で動物性油脂は危険とお伝えしましたが、なぜ危険なのか?その理由を3つ解説します。
それぞれ、わかりやすく解説しますね。
1. 何の動物から抽出した油なのかが不明
動物性油脂と曖昧に表記されると、何の動物から抽出した油脂なのかがわかりません。
牛や豚、鶏のような「身近な動物」だけじゃないの?
身近な動物だけとは限りません。一説によると「車にひかれてしまった野良犬や野良猫」も含まれているとか…。
もちろん、全ての動物性油脂に含まれている訳ではありませんが、僕たちに与えられた「動物性油脂」という情報だけでは、この可能性を否定しきれないのも事実です。
大好きな愛犬に得体の知れないものは食べさせられません。原材料を曖昧に表記せず、具体的に堂々と表記しているドッグフードを選びましょう。
2. 腐りやすく病気にかかる可能性がある
動物性油脂には、「腐敗しやすい」という特徴があります。具体的には、ドッグフードの表面に吹き付けられた動物性油脂が酸素に触れることで腐敗(酸化)が進むのです。
なんで腐敗しやすいの?
そもそも、動物性油脂や鶏油、牛脂などの「油脂全般」が腐敗(酸化)しやすいという特徴を持ちます。とりわけ動物性油脂は、原料となる動物がすでに腐敗していることが多いため「さらに腐敗しやすい」と言えるのです。
腐敗が進むとガスが発生するため、お腹にガスが溜まってしまったり(鼓腸症)、がんの原因となる可能性もあります。
愛犬が「おいしいね!」と喜んで食べたドッグフードが、病気の原因となるなんて耐えられませんよね。
3. 危険な「酸化防止剤」を高確率で使用
動物性油脂には腐敗しやすいという特徴がありましたね(詳しくはこちら)。
このため、動物性油脂を使用しているドッグフードの中には、使用制限がかかるほど強力な酸化防止剤で腐敗(酸化)を防いでいる場合があります。
以下の酸化防止剤が使われていたら要注意です。
添加物名 | 解説 | 使用制限 |
エトキシキン | 酸化防止剤として使用される添加物で、抗酸化力が強く安価。人間用の食品や農薬への使用は禁止されていますが、ドッグフードは「使用制限」を守れば使用可能…。 | エトキシキン、BHA、BHTの合計で150μg/g以下 エトキシキン単体の場合は75μg/g以下 |
BHA | 酸化防止剤として使用される添加物。ネズミへの投与実験では「発がん性」がみられましたが、ネズミ以外では発がん性はみられていません。 | |
BHT | 酸化防止剤として使用される添加物で、味・におい・色の変化を遅らせます。使用制限内であれば、発がん性や毒性はないと言われています。 |
さらに…!ドッグフードを製造する段階だけでなく、動物性油脂を製造する段階でも酸化防止剤を使用している可能性があります(酸化防止剤の二重添加)。
しかも、動物性油脂を製造する段階で使用した酸化防止剤は、ドッグフードの「原材料名」に表記する必要がありません。つまり、動物性油脂の製造段階で強力な酸化防止剤が使用されていても、僕たちは気付けないのです。
ドッグフードにおける動物性油脂の役割
危険な動物性油脂が、なぜドッグフードに含まれているのか?その理由(役割)を3つ解説します。
ぼくたちの健康のために入っている訳じゃないんだ…
残念ながら、わんちゃんの健康を想って使用されている訳ではありません。重要な栄養素である「脂質」が摂れるため、少なからず健康とは関係がありますが、脂質は別の食材からも摂れますからね…。
前置きが長くなりましたが、ドッグフードにおける動物性油脂の役割を3つ解説します。
1. 食いつきをよくする
どれだけ良質なドッグフードでも、わんちゃんが食べてくれなければ意味がありません。動物性油脂はわんちゃんが「美味しそう!」と感じやすいニオイがするため、食いつきアップが期待できるのです。
食いつきを良くするために、どのドッグフードも動物性油脂を使っているの?
良質なドッグフードは、動物性油脂を使用せずに原材料のニオイで勝負することが多いです。
たとえば、僕が長年購入している「このこのごはん」は、ドッグフード特有のツンとくるニオイではなく、鰹だしの優しい香りがします。でも、良質な原材料のみで作られているため、値段が高いのがデメリット。
2. 製造コストを削減する
動物性油脂の原材料は、動物の不可食部位(食用にはならない部位)であるため、安く入手できます。このため、1kgあたり500円以下のような低価格でドッグフードが販売できるのです。
低価格で売るためには、製造コストを下げる(原価を抑える)必用があるのです。
3. ドッグフードの粒を成型する
ドライタイプ(カリカリ)のドッグフードは水分が10%前後のため、このままではパサパサして粒の形が維持できません。そこで、常温で固まる性質を持つ動物性油脂を利用して、粒の形に成型するのです。
粒の形づくりにも役立ってたんだね!
愛犬には美味しくて安全なドッグフードを選ぼう!
今回は、動物性油脂について解説しました。要点をまとめますね。
- 動物性油脂はどのような動物が原料となっているかが不明
- 動物性油脂は腐敗(酸化)しやすいため酸化防止剤が必須
- 使用目的は食いつきアップ、製造コスト減、粒の成形の3点
動物性油脂は安価なドッグフードに使用されている可能性が高く、実際、ホームセンターなどに行けば、動物性油脂が使用されたドッグフードは簡単に見つかります。
でも、わんちゃんはからだに良い・悪いの判断ができません。「市販されているドッグフードだから安心」と油断せずに、危険な原材料が使用されていないか ”あなたがチェック” してあげてくださいね。
わたしたちも危険な原材料を見分けられる知識をつけないとね!
動物性油脂以外の危険な原材料は、以下の記事にまとめています。愛犬を守るため、ぜひ読んでみてくださいね。