グレインフリー(穀物不使用)ドッグフードが流行っているけど、わんちゃんに穀物は必要ないの?
人それぞれ意見は異なりますが、犬の管理栄養士である僕としては「穀物アレルギーがないわんちゃんは、穀物を食べた方が良い」と考えています。適量の穀物は、優れた栄養源になりますからね。
でも、有名なドッグフードメーカーがグレインフリーの良さを宣伝しているためか、「わんちゃんに穀物は不要」「穀物入り=低品質」と感じている愛犬家がいるのも事実です。
そこで本記事では、以下3点を中心に「穀物の役割・必要性」について徹底解説します。
ぼくはお肉が好きだけど、穀物も重要そうだね!
愛犬の体質と穀物の役割を知って、「本当にグレインフリードッグフードを選ぶべきなのか?」が判断できるようになりましょう。
【自己紹介】生まれた時から犬がいる環境で育ち、犬が大好き。あなたの愛犬が元気に長生きできるように、心を込めて記事を作成しています(詳細プロフィールはこちら)。
【所有資格】1.SAE認定「犬の管理栄養士マスター」2.ペットフード協会認定「ペットフード販売士」3.JCSA認定「ドッグトレーナープライマリーライセンス」4.アニマルウェルネス協会認定「ペットフーディスト」
本編が始まるよ!
ドッグフードには「適量の穀物」が必要である3つの理由
お店でグレインフリーがおすすめされていると、「わんちゃんに穀物は必要ないのかな?」と思ってしまいますよね。でも、冒頭でお伝えしたとおり…
穀物アレルギーがなければ「適量の穀物」はわんちゃんの健康に必要です。
また、ドッグフードを製造する過程でも穀物は重要な役割を果たしています。これから、ドッグフードには穀物が必要である理由を3つ解説しますね。
どれも難しそう…。ぼくにもわかるかな?
わかりやすく解説するので、安心してくださいね。それでは、さっそく1つずつ見てみましょう。
1. 栄養バランスの調整に必要
ドッグフードはそれぞれ「どんなわんちゃんに食べてもらうのか」を考えて作られています。つまり、ターゲットとなるわんちゃんに合わせた、栄養バランスの調整が必要となるのです。
たとえば、高齢のわんちゃん向けであれば「ビタミンE(抗酸化物質)」を多めに、腎臓病のわんちゃん向けであれば「リン(腎臓病の進行を早めると言われる)」を少なめにするといったイメージです。
このような栄養バランスの調整に役立つのが「穀物」なのです。
なんで穀物は栄養バランスを調整できるの?
なぜなら、穀物は ”部位” によって含まれる栄養素が異なるため、「必要な栄養素」が含まれている部位のみを使用することで、「不要な栄養素」を可能な限り排除できるのです。
ちなみに、小麦の部位ごとの栄養素はこちら。
- 【胚乳】デンプン(エネルギー源)が多い。
- 【表皮】食物繊維、鉄分、カルシウムが多い。
- 【胚芽】タンパク質、脂質、各種ビタミン・ミネラルが多い。
使用する穀物の ”部位” を工夫することで、ドッグフードの目的に合わせた栄養バランスの微調整が可能となるのは大きなメリットですね。
2. ドッグフードの成型に必要
穀物には、ドッグフードの形を保つ「つなぎ」の役割もあります。例えば、生肉のみではドッグフードの形を保ち難いですが、小麦などの穀物がつなぎの役割を果たすことで、形を保つことができます。
ハンバーグを作る時に「パン粉」を入れるのと一緒だね!
「グレインフリー(穀物不使用)の場合はどうするの?」と、思いますよね。この場合は、つなぎとして「増粘安定剤(添加物)」が使用されることがあります。
- 増粘安定剤とは
- ドライフードでは、成型するためのつなぎ、硬さや食感の調節を目的に使用。ウェットフードでは、とろみ付け、ゼリー状に固めるために使用。
増粘安定剤は、比較的リスクが低い添加物と言われています。愛犬のごはんに含まれていても、過度な心配は不要です。
ですが、添加物に頼らず、自然の食材である穀物がつなぎの役割を果たしているドッグフードの方が安心ですよね。
3. 製造コストの削減に必要
小麦やトウモロコシのような穀物は、お肉と比べると安価で入手しやすいため、ドッグフードの製造コストを下げることができます。このため、意図的に穀物をたくさん使っているドッグフードもちらほら…。
穀物でかさ増ししてるってこと?
そのとおり。わんちゃんの大好きなお肉の割合を減らし、安い穀物でかさ増ししているドッグフードもあるのです。以下のような特徴を持つドッグフードは「あやしいかも…?」と疑ってみましょう。
- 原材料の一番はじめが穀物
- 他の商品と比較して販売価格が安い
原材料の一番はじめに穀物が表記されているとダメなの?
大まかに言うと、原材料は「含有量が多いものから順番に表記する」というルールがあります。つまり、穀物をたくさん使っていれば、穀物が一番はじめに表記されるのです。
たとえば、以下の場合は、たくさん使った材料は「鶏肉(ささみ、レバー)」だとわかります(画像は「このこのごはん」の公式サイトから引用させていただきました)。
犬は「肉食寄りの雑食動物」ですので、メインの食材はお肉(動物性原料)が良いとされています。このため、原材料の一番はじめが穀物の場合は要注意です。
グレインフリーは穀物不使用だけど栄養不足にならない?
ドッグフードには穀物が必要とされる理由はご理解いただけましたか?「製造コスト削減」以外は、わんちゃんにとって大切な役割を担っていましたね。
でも、グレインフリードッグフードには穀物が入っていないけど大丈夫なの?
グレインフリーの場合、本来であれば穀物から得られる栄養素(主に炭水化物)が摂取できませんよね。でも、穀物以外の食材、特にマメ類から炭水化物が摂取できるよう計算されていますのでご安心ください。
例として、グレインフリーで有名な「モグワンドッグフード」の原材料を見てみましょう。
当たり前ですが、小麦やトウモロコシなどの穀物は使われていませんね。その代わり、サツマイモやエンドウ豆、ひよこ豆のような、消化に優しい野菜が炭水化物源として使用されているのです。
なるほど!これなら、わんちゃんに必要な栄養基準を満たせるね!
ですが、冒頭でお伝えしたとおり、適量の穀物は優れた栄養源となります。穀物アレルギーでなければ、あえてグレインフリーを選ぶ必要はないことは覚えておきましょう。
ドッグフードに「穀物は不要」と思われている3つの理由
でも、「わんちゃんに穀物は不要」って意見も聞いたことがあるよ。
たしかに聞きますよね。独自のアンケートを実施したところ、愛犬家200名中132名(66.0%)が「わんちゃんに穀物は不要」だと思っていることがわかりました。不要だと思う理由はこちら。
どの理由も正しそうですが、実は間違った情報が混ざっています。どれかわかりますか?
これら3つの理由を深掘りしながら、「本当にわんちゃんにとって穀物は不要なのか?」を解説します。
1. 消化・吸収ができないため穀物は不要
「消化・吸収ができないため穀物は不要」が36.5%で第1位。わんちゃんの唾液には、穀物に含まれるデンプンを分解する酵素(アミラーゼ)がありません。つまり、口内では穀物を消化できないのです。
でも、膵臓からは分解酵素が分泌されているため、腸内では穀物を消化できるのです。ただし、加熱処理されていることが条件です。加熱処理せずに生のまま食べると、消化できずにお腹を壊してしまうので要注意です。
私たちがお米(穀物)を、炊飯器で炊いて(加熱処理して)食べるのと同じだね!
これで「わんちゃんは穀物を消化できない」も誤解だとわかりましたね。
愛犬家が「ドッグフードに穀物は必要ない」と思う理由ベスト3を解説しました。穀物アレルギーでなければ、穀物は食べても良いことをご理解いただけたら嬉しいです。
- 補足情報
- わんちゃんは食べ物を咀嚼せず、飲み込める大きさに噛み切って、そのまま食べてしまいます。一方で人間は、唾液の分解酵素で「デンプン」を「糖」に分解できます。ごはんをよく噛むと甘く感じるのは、糖に分解しているからなのです。
2. 犬の先祖は肉食のため穀物は不要
「犬の先祖は肉食のため穀物は不要」が35.0%で第2位でした。わんちゃんの祖先であるオオカミは、お肉をムシャムシャ食べるイメージがあるため、気持ちはわかります……が!
オオカミはお肉だけじゃなくて、豊富なビタミンや鉄分が含まれている血液や内臓、骨も食べて栄養バランスを整えています。鹿などの内臓(胃)には木の実などを消化した「植物成分」が含まれているため…
オオカミも「間接的に植物や穀物を食べている」と言えるのです。
よって、「犬の祖先は肉食なので穀物は必要ない」は誤り。わんちゃんが穀物を食べなくて良い理由にはならないことがわかりましたね。
3. アレルギーの原因となるため穀物は不要
「アレルギーの原因となるため穀物は不要」が24.5%で第3位でした。たしかに、アレルギーの原因の代表例として、しばしば穀物が取り上げられます。でも、アレルギーの原因は穀物だけではありません。
こちらのグラフを見ると、穀物よりも牛肉、乳製品、鶏肉の方がアレルギーのリスクが高いことがわかりますね。
穀物のように「アレルギーの可能性がある食材はダメ!」と言い出したら、愛犬の食べ物がどんどん減ってしまいます。愛犬が心配という気持ちは痛いほどわかりますが、穀物だけをあえて避ける必要はありませんよ。
でも、愛犬が穀物アレルギーの場合は、穀物不使用(グレインフリー)のドッグフードを食べさせてあげましょう。愛犬が安心して食べられるドッグフードを選ぶことが、僕たち飼い主の役目なのですから。
その際は、以下の記事がお役に立てると嬉しいです。
≫穀物不使用(グレインフリー)ドッグフードの選び方とおすすめ5商品
愛犬の体質から「穀物」の必要・不必要を判断しよう
今回は「わんちゃんに穀物は必要?」について解説しました。要点をまとめますね。
- 適量の穀物は優れた栄養源となるため摂取した方が良い
- 穀物アレルギーでなければグレインフリーは不要
- グレインフリーは穀物不使用だが栄養不足にはならない
穀物アレルギーがある場合は、グレインフリーを選んでね!獣医さんへの相談も忘れないでね。
最後に昔話をひとつ。僕は、ペットショップの店員さんから「ドッグフードならグレインフリーがおすすめです」と、接客を受けた経験があります。愛犬は穀物アレルギーじゃないのに…。
しかも、おすすめされたドッグフードはグレインフリー(穀物不使用)ではなく、グルテンフリー(小麦に含まれるタンパク質の一種「グルテン」を不使用)でした。両者の違いは以下の記事で詳しく解説しています。
≫ドッグフードの「グレインフリーとグルテンフリーの違い」を徹底解説
店員さんにもドッグフード初心者の時期はあります。誰もが通る道ですので、責めるつもりはありません。でも、愛犬家にとってドッグフード選びは本当に重要です。なので…
あなた自身が「愛犬に最適なドッグフード」を選べるようになりましょう!
そのお手伝いができるように、本ブログを通して有益な情報をお伝えしていきます。僕は犬の管理栄養士マスター、ペットフード販売士の資格がありますのでお任せください!